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「サンシャイン・ボーイズ」本多劇場千穐楽感想 [公演感想]

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【感想】(ネタバレあります)
加藤健一事務所公演「サンシャイン・ボーイズ」本多劇場千穐楽を観てきました。
千穐楽は下手の前の席だったので、下手の背もたれの椅子が素敵なことに気づきました。今は古くなっているけれど、昔は豪華なスイートルームだったんだろうな~と思いました。
部屋にはサンシャイン・ボーイズ時代の写真がいっぱい飾られています。ウィリー(加藤健一)はアル(佐藤B作)のことが大嫌いだと甥のベン(加藤義宗)に話しますが、本当に嫌いなら二人の写真を飾らないと思います。アルが10数年ぶりにウィリーの部屋を訪ねてきた時にその写真を見てちょっとほっとしたんじゃないかな。ウィリーの部屋は暖房も効かず、その暮らしぶりをアルも察したと思います。一方、アルは幸せそうに家族の話をするけれど、同居している娘たちとは”干渉もせず”との言葉に孤独を感じました。
ウィリーは演劇雑誌「バラエティ」を毎週読んでいて、訃報記事もチェックしています。知人が亡くなっていく事実になんとも言えない寂しさを感じました。2年前に観た時には感じなかった感覚で、自分の周囲にも知人の訃報が増えたせいかもしれません。
TVの特番のための一回限りのコンビ復活があるのか?と思いきや、大げんかになり、ウィリーは心臓発作で倒れてしまいます。自宅療養中にベンから「もう仕事はできない、引退だ」と告げられる場面は切ない気持ちになります。今後の選択肢はベン家族と同居するか、アクターズホームという介護施設に入るかの二つしかない。ベンが叔父さん想いの人だからまだ救われます。ベンが話し終わって「これでだいぶほっとしたよ」という言葉は印象に残りました。
ウィリーの部屋にアルが尋ねてきますが、この再会の場面は大好きです。二人が笑いながら握手するときは心があたたかくなります。
ラストシーンのベットで寝ているウィリーの隣でアルが一人話している場面は、初演より面白いと感じました。アルはこれからもこんな風にしゃべっているだろうし、ウィリーはその横で頭を抱えながら苦笑いしている。この二人はずっとこうなんだろうな~と微笑ましくなりました。
「サンシャイン・ボーイズ」はニールサイモンが悲劇を書くと宣言した戯曲ですが、今回悲劇だというのがよくわかりました。その中に涙あり、笑いあり、不器用な優しさがあります。それとウィリーに送られてくる数々のプレゼントやお花、電報は今回ホンモノだとわかりました。ウィリーは多くの人に愛されてる。
加藤さんとB作さんのコンビは最高です。息がピッタリというのはこういうことなんだなぁって思いました。カーテンコールでは心から拍手を送りました。素敵なお芝居を創ってくれた出演者、スタッフの皆様、本当にありがとうございます。
本多劇場の公演は始まったと思ったらすぐに千穐楽がきてしまい寂しいです。もう少し長く観ていたかったな~と思います。
本多劇場の公演の後またツアーが始まっています。2月27日の大千穐楽まで無事に上演されることを願っています。

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「サンシャイン・ボーイズ」本多劇場初日感想 [公演感想]

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加藤健一事務所vol.116
「サンシャイン・ボーイズ」
作:ニール・サイモン
訳:小田島恒志 小田島則子
演出:堤 泰之
CAST:加藤健一 佐藤B作 加藤義宗 田中利花 照屋 実 韓 佑華 佐野匡俊(声の出演)清水明彦(文学座) 加藤 忍
STAFF
美術:乘峯雅寛 照明:古宮俊昭 音響:秦 大介 衣裳:竹原典子 ヘアメイク:川村和枝 舞台監督:笹原久義
上演時間:2時間30分(休憩15分を含む)

【あらすじ】
ニューヨークの古びたホテルの一室で、悲惨な生活をおくるひとりの男、ウィリー・クラーク(加藤健一)。元はヴォードヴィルの大スターコンビであったウィリーは、ひとりとなった今でも役者としての自分は終わっていないと必死にもがくものの、その気持ちとは裏腹になにもかもが上手くいかず仕事にありつけない。
ある日、テレビ局の副社長が頭をさげてお願いするほどの大仕事を、ウィリーの甥でありマネージャーのベン・シルバーマン(加藤義宗)が持ってくる。ウィリーは当然引き受けると思いきや、出演の条件は元相棒アル・ルイス(佐藤B作)との“サンシャイン・ボーイズ”による往年の名作コントだと聞いて出演拒否の一点張り!
喜劇の黄金時代が生んだ史上最高のコンビとまで言われたルイス&クラーク、11年ぶりの名コンビ復活となるのか!? ラストショーの最後に待ち受けるふたりの運命は…?(加藤健一事務所HPより) 

【感想】
初日観てきました。待ちに待った「サンシャイン・ボーイズ」です。久しぶりに観たウィリー(加藤健一)は格好いいな~と思いました。甥(加藤義宗)が持ってきたアル(佐藤B作)との共演の話を最初はとても嫌そうなのに、だんだんと嬉しそうだなぁ~って感じるところがありました。
ウィリーとアルの会話はもちろん、それぞれのやりとりが面白かったです。そしてちょっと哀しみも混じってる。歳を取るってこういうことなんだなぁ~って実感しました。2年前に観た時には感じなかった感覚です。二人とも頑固で自分を曲げないけれど、そういう二人が愛おしいと思いました。もうそのままでいてって感じです。
外は寒いけれど、心があったかくなるお芝居を観ることができて元気になれました。

初日の終演後は初日イベントがありました。加藤さんとB作さんが地方公演の話や過去の舞台での失敗談を話してくれて面白かったです。二人で立っているとコントが始まりそうだなぁ~思ってしまいました。お芝居の中のコントは早口でとても面白かったです。

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「ジン・ゲーム」千穐楽感想 [公演感想]

ジンゲーム3.jpg

【感想】(ネタバレあります)
加藤健一事務所公演「ジン・ゲーム」千穐楽を観てきました。
ウェラー(加藤健一)とフォンシア(竹下稽古)がだんだんと変わっていくのが面白いです。フォンシアは初日よりもウェラーとの勝負を楽しんでいるようでした。フォンシアが勝って「ジーン」って大声で言う時は拍手が起きていました。
思っていた以上に笑えるお芝居ですが、フォンシアがもう何年も息子と音信不通状態が続いているのは辛いだろうな・・・って思いました。息子との関係で泣いているフォンシアにウェラーが「仕方ないよ、やるべきことはすべてやったんだから」って言う台詞が思いやりがあってとても好きです。ウェラーにしか言えないと思っています。

最後の対戦で、ウェラーは自分もジンができていたのにフォンシアに先を越されてしまうなんて、ものすごいショックだろうなと思いました。肩を落として部屋に戻っていくウェラーを見て、フォンシアは「ダメだわ、私って」ってつぶやきます。自分の嫌なところが出てしまったと思ってるんだろうな・・・ でもラストに微笑むんですよ。自分の嫌なところもフォンシアは受け入れることができたのかな~って思いました。

これからまた二人はジンゲームをすると思います。最初のフォンシアの勝ちは偶然だったと思うけれど、実はフォンシアはトランプゲームの才能があると思っています。ウェラーはいつも先行をフォンシアに譲っていたけれど、最後の対戦のように最初に自分に札を配って、対等に勝負すればそろそろ勝てる気がします。

カーテンコールでは、加藤さんの心からの笑顔を見ることができて本当に良かったです。劇場全体が大きな拍手に包まれて、とても素敵な空間でした。
加藤さん、竹下さん、スタッフの皆様、ありがとうございます。
再演があることを期待しています。

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「ジン・ゲーム」初日感想 [公演感想]

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加藤健一事務所vol.115
「ジン・ゲーム」
作:D.L.コバーン
訳:吉原豊司
演出:小笠原響
CAST:竹下景子 加藤健一
STAFF
美術:乘峯雅寛 照明:古宮俊昭 音響:秦 大介 衣裳:竹原典子 ヘアメイク:馮 啓孝 舞台監督:笹原久義
上演時間:2時間(休憩15分を含む)

【あらすじ】
春。老人ホームのサン・デッキで出会ったフォンシア(竹下景子)とウェラー(加藤健一)。
入居者や食事や看護師への愚痴で息の合う二人。ホーム独特の空気感に馴染めない二人は、トランプ遊びを始める。時間つぶしがてら気軽に始めたゲームだが、初心者のフォンシア相手に全く勝てないウェラーは、対戦を重ねるごとに苛立ってきて…。(加藤健一事務所HPより)

【感想】
加藤健一事務所公演「ジン・ゲーム」の初日を本多劇場で観てきました。
シビアなお芝居なのかな~と思っていましたが、思っていた以上に笑えました。あるあるってことも一杯。このお芝居を観て、友人って大切だな~と思いました。それと年配の人を子供扱いしてはいけない、人のプライドは大切にしないといけないな~と思っています。
以下、ネタバレの感想になります。

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「グッドラック、ハリウッド」公演感想 [公演感想]

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【感想】(ネタバレあります)
加藤健一事務所公演「グッドラック、ハリウッド」の感想です。
とても面白かったです。初日から何回か観ましたが、観る毎に感じることがちがったり発見があったりしました。まずボビー(加藤健一)のことから書きます。
暗転から明かりがつくと、ボビーは机の上にのって梁にロープをくくりつけている。異様なシーンなんですが、ボビーの姿が絵になっていて格好いいな~と思ってしまいました。そこへデニス(関口アナン)が偶然入ってきます。二人の会話が面白かったです。世代のちがいも感じました。
9年間映画を撮っていないボビーは仕事をしたくて仕方がない。ボツになった自分の台本をデニスの名前で売り込もうとします。売り込みは成功したけれど、ボビーが監督をするという条件は却下されデニスが監督をすることに。仕方なくボビーはデニスに毎日こっそり指示を出し裏で監督することにします。もしこれが上手くいけばもう一度返り咲けるという野心を持ちながら。
しかし完成した映画はデニスの思う通りに作られていました。愕然としているところにデニスがやってきます。映画の評判がよく上機嫌だったデニスですが、ボビーに嫌みを言われると豹変しボビーを”あんた”呼ばわりします。初日はこれを聞いて腹が立ちました。よく考えるとデニスは自分を利用して返り咲こうとするボビーの魂胆に途中で気づき、そうはさせまいと自分がいいと思う表現に変えたんでしょうね。
助手のメアリーは「この映画は良いと思う、二人の良さが出てる。共同作業は上手くいった」と評価します。でもプライドの高いボビーは100パーセント自分の作ったものしか認めない。「だったら、映画作りはやめてください」ってメアリーに言われて、ボビーは「私を誰だと思っているんだ、ボビー・ラッセルだぞ!」と怒ります。そう言った後の彼の表情が心に焼き付いています。自分の作ったものへの自信と、今はその名前が必要とされていないことを実感した瞬間だと感じました。
一人になったボビーはまた机に登りロープを手にします。初日は、”まさか・・・、いやそんなことはしないはず・・・”という気持ちが心の中に渦巻いていました。
そこへまたデニスがやってきます。必死で止めるデニスに、ボビーは「今の世の中には、愛と癒やしの映画はもうない。破壊の映画ばかりだ・・・」と話します。その言葉に感動しました。加藤さんが人のあたたかい方の心の扉をノックする芝居を作り続けている気持ちと重なります。
そしてボビーがナイフでロープをスパッと切った時、気持ちがすっとしました。あのロープは目障りで見ると気持ちがざわついていたから。ボビーは自分はパリに行くからと言ってデニスに後を託します。その時のボビーの言葉は本気だと感じました。自分のポケットチーフをデニスの胸ポケットにそっと入れる仕草も良かったです。
「さらば、あとはよろしく」と言って立ち去るボビー、実は初日、”ボビーはもう映画は作らないんだなぁ・・・”と思って寂しさを感じましたが、ボビーは自分の作りたい映画が作れなくなった場所にいるのをやめたんだ、と思うようになりました。ボビーの決意に大きな拍手をおくりたくて、千穐楽では精一杯手を叩きました。

デニスは最初、名監督ボビー・ラッセルを崇拝していて素直な感じだったんですが、だんだんと変わっていくのに驚きました。助手のメアリー(加藤忍)と話してる時は横柄で、ボビーといる時とは別人のよう。デニスがボビーのひげそりを使ってるの場面があるのですが、違和感がありました。ボビーに許可をもらったと言ってるけれど、嘘じゃないかと思いました。自分のものをとても大切にしているボビーと、使えるものなら何でも使ってもいいと思っているデニスがここで対比されているように思います。ボビーに自分の言いたいことを言い放つデニスですが、しばらく経つと「言い過ぎました」と謝りにきます。その言葉に嘘がなさそうなので、まぁいいかって思えました。デニスってなぜか憎めないんですよね。デニスはボビーの映画は全部観ていて彼を尊敬しているってことは事実だし、あの映画も全くボビーの教えを全く無視したわけじゃないと思っています。

メアリーはボビー・ラッセルと仕事がしたいと思ってハリウッドにやってきた女性。本も映画もたくさん観てきて、夫と離婚して子供を育てるために色々な仕事をしてきている。とても魅力的です。
メアリーがデニスに「ボビーは人が見たいものを作るんじゃなくて、自分が見たいものを作るんです、だから彼は偉大なんです」って言う言葉を聞いて、芸術と商売のちがいを感じました。デニスは人が喜ぶもの、受けるものを敏感にキャッチする能力はあるけれど、それは商売であって芸術じゃないと思います。
ボビーのことが心配で車でかけつけるシーンが好きです。ボビーが死にたくなるような状況をなんとか変えようとする彼女の気持ちが伝わってきました。ボビーに「もう映画作りはあの人たちにまかせましょうよ。もう十分それも良い形で作ってきたじゃないですか」と説得する場面は感動しました。ボビーに「映画作りをやめてください」なんてメアリーにしか言えないと思います。「2週間休暇を取ったからパリを案内してほしい」とボビーを誘うのもさすがだと想います。ボビーが新しい一歩を踏み出せるための逃げ場所を用意してあげてる気がします。

とても面白くて素敵なお芝居です。観てる時も楽しめるし、観た後も楽しめる。私は観る度にこのお芝居が好きになっていきました。終わってしばらくは気が抜けてしまって感想を書くのも遅くなってしまいました。
素晴らしいお芝居を作って上演してくれた加藤健一さん、加藤忍さん、関口アナンさん、スタッフの皆様、ありがとうございます。心に残るお芝居でした。ぜひ再演してほしいと思っています。

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「グッドラック、ハリウッド」初日感想 [公演感想]

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加藤健一事務所vol.114
「グッドラック、ハリウッド」
作:リー・カルチェイム
訳:小田島恒志
演出:日澤雄介
CAST:加藤健一 関口アナン 加藤 忍
STAFF
美術:乘峯雅寛 照明:古宮俊昭 音響:秦 大介 衣裳:竹原典子 ヘアメイク:馮啓孝 舞台監督:畑﨑広和
上演時間:2時間(休憩なし)

【あらすじ】
とあるオフィスのスプリンクラーから垂れ下がった、先に輪のついたロープ。そして机の上に立つ男。偶然入って来た若い作家のデニス(関口アナン)がハリウッドに来て早々に出会った不審なその男は、過去に大成功を収めた憧れの名監督で脚本家のボビー・ラッセル(加藤健一)だった。しかし今、ボビーの脚本を映画会社は受け入れてくれない。求めているのは質の良い脚本でも、監督の実力でもない。デニスのような「トレンドに乗った人間」なのだ。
この衝撃的な出会いをきっかけに、新旧の二人は詐欺まがいな共同作業をすることになる―誰も傷つかない嘘をつこうじゃないか。何も知らない助手のメアリー(加藤忍)は、そんな二人の違和感に気付きボビーを心配し始める。垂れ下がり続けるロープ、そしてクランクアップした映画が三人にもたらした新しい人生、待ち受ける人生とは…。(加藤健一事務所HPより)

【感想】
加藤健一事務所公演「グッドラック、ハリウッド」を本多劇場で観てきました。
暗転になり音楽が流れてくると、気持ちがハリウッドに向かってました。
明るくなると、机の上にボビー(加藤健一)が立っていて、つり下がったロープを手にしている。不穏な空気。そこにデニス(関口アナン)が部屋を間違えて入ってくる。二人の会話が面白いです。ボビーのジョークも笑える。
ボビー、デニス、そして助手のメアリー(加藤忍)の三人がそれぞれ複雑な感情を持っていて、それが変化していくのが面白かったです。三人が舞台上で一緒にいるシーンは少なくて、ほとんどが二人ずつなんですが、デニスがボビーといる時とメアリーといる時で全く別人のようだったりします。メアリーもデニスといる時にボビーに対する気持ちを話したりします。
ボビーが自分で書いた台詞とデニスが書いた台詞を比較するシーンがあるのですが、私はボビーの書いた台詞の方がずっといいなぁ~って思います。なのに、今の映画界ではデニスの方が受け入れられるという現実。自分がよくないって思うものがもてはやされて、いいって思うものが否定される状況ってかなり辛いだろうな~って思いながら観ていました。
ボビーが今の映画界に対する想いを話すシーンがあるのですが、そこはぜひ劇場で聴いてほしいです。
最後の最後までハラハラするお芝居です。このお芝居はネタバレしない方がいいと思うので、初日のラストの感想は千穐楽が終わってから書きたいと思います。

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「夏の盛りの蝉のように」京都公演感想 [公演感想]

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【感想】
12月7日に本多劇場で幕が開いたと思ったら、あっという間に大千穐楽になってしまいました。寂しさもあるけれど、観られることに感謝しながら目一杯楽しもうと思った京都公演、とても楽しかったです。

北斎(加藤健一)の絵に向き合う情熱はものすごい。歳を重ねて衰えるどころか極めようとしていくのがさすがだなぁ~と思いました。並の人間じゃない。北馬(新井康弘)が”ありぁ、化け物だ”っていうけれど、そういう部分もあるかも。ただ、崋山(加藤義宗)が亡くなり、国芳(岩崎正寛)と激論をかわした後に北斎が涙ぐみながら引っ込んでいく時、他人には見せない北斎の深い悲しみと人間味を感じました。

二幕の幕開きの崋山とおきょう(日和佐美香)の会話では、互いの立場のちがいから気にかける対象がちがっていて面白かったです。
初日観た時、崋山は優柔不断に思えましたが、絵を描く以外にも大きな使命を感じていたんだなぁと思いました。
国芳は、なんとかして北斎とはちがうやり方で自分を表現しようとしているのが痛いほど伝わってきました。
京都公演は真ん中くらいの席で観たので、照明がきれいに見えました。和物らしい明かりが素敵。
ラストのスポットライトに浮かぶおえい(加藤忍)の表情がなんとも言えずきれいでした。
楽日はスクリーンの不具合があってどうなるのかな?って思いましたが、黒い幕に映像を映してもらえてほっとしました。

このお芝居、登場する一人一人のパワーをすごく感じます。決して生きやすい時代じゃないのに、その時々をもがきながらも精一杯生きているのが伝わってきて感動しました。私もがんばろうって思える。
素敵なお芝居をありがとうございます。全公演が上演できて本当に良かったです。

追記)本多劇場に掲示されていた配役表です。

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「夏の盛りの蝉のように」本多劇場千穐楽感想 [公演感想]

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【感想】(ネタバレあります)
加藤健一事務所公演「夏の盛りの蝉のように」本多劇場千穐楽を観てきました。すごく良かったです。お芝居の世界に入りこんでいました。
初日に観た時から北斎(加藤健一)が国芳(岩崎正寛)に”絵は絵なんだ!”って言う言葉が心に残っています。崋山(加藤義宗)が”北斎がそんな言葉を・・・”って言っているのを聞くと、あの言葉は本心じゃないのかな?と思ったりもしましたが、北斎は本心で言っていると私は思っています。
絵に対する考え方は人それぞれだけど、国芳が崋山に影響を受けていたりするのが面白い。

二幕の後半、亡者たち【北斎、崋山、おきょう(日和佐美香)、北馬(新井康弘)】がおえい(加藤忍)の家に取り憑いていて、そこへ国芳がお酒を持って訪ねてきます。そのシーンがとても好き。亡者たちと生きている二人の会話が面白いです。国芳が”肴は亡者に限る”っていう台詞がいい!
国芳が帰りがけに、病んでるおえいに”体早く直すこったね”という言葉があったかい。おえいが”今日芳さんに会えて本当に良かった”っていうのが切ないです。おえいは国芳のことが好きだったんだなぁ~っていうのがしみじみ伝わってきます。
ラストにおえいが”お父っちゃん”て言うと、北斎が”うん”って返すところ、とても良かった。おえいの気持ちを北斎はすべてわかってるって感じました。おえいは死を覚悟して旅に出ていくけれど、やっと北斎たち仲間のところに行けるんだなぁ~って思います。

このお芝居、北斎の絵のように奥が深いから観る人によって色々な感想があると思います。私も観る度に発見があってとても面白いです。
本多劇場の千穐楽の公演を観ることができて本当に良かったです。素晴らしい劇場空間でした。

12月24日と25日は京都公演です。迷っておられる方はぜひ京都で「夏の盛りの蝉のように」を観てください。府民ホール・アルティは音がきれいに聞こえて、どこからでも舞台が観やすい劇場です。
詳しくはこちら。チケットは残りわずかです。

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「夏の盛りの蝉のように」初日感想 [公演感想]

夏蝉2.jpg

加藤健一事務所vol.113
「夏の盛りの蝉のように」
作:吉永仁郎
演出:黒岩 亮
CAST:加藤健一 新井康弘 加藤 忍 岩崎正寛(演劇集団 円) 加藤義宗 日和佐美香
STAFF
美術:柴田秀子 照明:石島奈津子 音響:秦 大介 映像:浦島 啓 衣裳:中村洋一 ヘアメイク:馮 啓孝 舞台監督:笹原久義
上演時間:2時間45分(休憩15分を含む)

【あらすじ】
日本を代表する浮世絵界の巨匠、葛飾北斎。北斎の弟子の中では筆頭にあげられた蹄斎北馬。武士でありながら肖像画を描いて日本一と言われた渡辺崋山。遅咲きながら武者絵や戯画など独創的な浮世絵を生み出した歌川国芳。そして、晩年まで父・北斎の画業を助け、北斎の画才を受け継ぎ一目置かれる絵師となったおえい(葛飾応為)。
舞台はこの絵師たちが己の絵の道に葛藤し活躍した文化13年(1816年)から安政5年(1858年)。それぞれが生き様や志を絵にぶつけ北斎に立ち向かうも、いくつになっても頂点であり続けようと向上心むき出しの“化け物”に打ちのめされ、己の不甲斐なさに怒り悲しみ、そしてそれを活力にまた筆をとる。変化する時代の波に翻弄されながら、家柄や流派を超えて切磋琢磨し、世の中を相手に絵師として熱く議論を戦わせる江戸の者たち。暑く眩しい季節に忙しなく聞こえてくる、あの夏の盛りの蟬のように。(加藤健一事務所HPより)

【感想】(ネタバレあります)
加藤健一事務所公演「夏の盛りの蝉のように」本多劇場初日を観てきました。
それぞれの登場人物の生き様を観ることができて、とても面白かったです。
葛飾北斎(加藤健一)はすごく格好いい。絵を描くことへの情熱、頂点を極めようとする気迫が伝わってきて、さすがだなぁ~って思いました。北斎の話す一言一言が心に響いてくるし、無言で絵を描いている姿にも目を奪われました。
渡辺崋山(加藤義宗)は本当は絵だけを描いて生きたいと思っているのに、武士を捨てられない人で、見ていてちょっとイラっとしました。昔の私に似たところがあるせいかも(苦笑)北斎から才能を認められ「武士の代わりはいくらでもいるけど、崋山の絵は崋山しか書けない」とまで言ってもらっているのに、勿体ないなぁ~って思います。
蹄斎北馬(新井康弘)は登場すると、ほっとします。浮世絵の歩みなども紹介してくれて、その説明がわかりやすかったです。穏やかに見えるけれど、心の奥には絵師としての葛藤をかかえているのがラスト近くでわかりました。
歌川国芳(岩崎正寛)はまだ絵が売れていない時に「若い頃は駆け出しでよかったけれど、10年たったらそんな看板担いでられねぇ」っていう台詞は、そうだよなぁ~って思いました。
おえい(加藤忍)は12歳の子供から50代まで演じるけれど、その時々の気持ちが伝わってきます。ラスト近くのお酒を飲むシーンが特にいいな~ 
おきょう(日和佐美香)は色っぽいです。それでいて嫌らしくない。ふわっとした感じの女性で素敵です。
ラストにそれぞれの想いをもう一度繰り返して話すところがあるのですが、それを聞いてまた最初から観たいって思いました。このお芝居、奥が深いです。観る度にちがうことを発見すると思います。次に観るのがとても楽しみです。

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「スカラムーシュ・ジョーンズ or 七つの白い仮面」千穐楽感想 [公演感想]

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【感想】(ネタバレあります)
加藤健一事務所公演「スカラムーシュ・ジョーンズ or 七つの白い仮面」千穐楽の感想です。
初日は前の方の座席でしたが千穐楽は真ん中くらいでした。舞台全体がよく見えて、特に照明がきれいに見えました。
スカラムーシュ(加藤健一)が初めて船に乗った時にその景色を話してくれるのですが、その情景が目に浮かびました。それから月の話とか、ラスト近くのテムズ川とビックベンの白い文字盤とかも目に浮かんできました。テムズ川を眺めながら、その川の水は世界につながっている・・・と話す場面があって、そこはなんかじーんときました。

私の大好きな場面は、スカラムーシュがテムズ川の橋の下で、初めて笑うところです。イギリスの地で偶然出逢ったトリニダード・トバコ出身の物乞いたちと酒を飲んで話をしていた時ですが、やっとスカラムーシュも心から笑えたんだ・・・って思うと嬉しくなりました。
スカラムーシュは初めて笑って涙を流すと、今までの6つの仮面が溶け始めます。その時の描写も素敵で、ずっと加藤さんの声を聴いていたいなぁ~って思いました。

その後、スカラムーシュは”自分は生まれながらの道化だ”と悟って、道化師のドーランを買いに行きますが、そのドーランを塗っている時「痛みを取る軟膏のように」って言ってるのを聞いて、ちょっとほっとしました。道化師になってからの50年は何も語りませんが、どんなに辛い時や哀しい時も人を笑わせていたんだと思います。子供の笑い声でスカム-シュの心の傷が少しでも癒やされているといいな~と思ってます。

 話を終えたスカラムーシュが蝋燭の火を吹き消した後はまっくらになって寂しかったです。ビックベンの12時の時計の音が深く心に響いてきました。そしてもう一度明かりがつくと、スカラムーシュがブランコに乗って、空から降りてきてくれる! すご~い! 寂しかった気持ちが急に明るくなりました。カーテンコールの拍手はすごく大きくて、あたたかく感じました。私も心を込めて拍手しました。

 加藤さん、新しい一人芝居に挑戦し、素晴らしいお芝居を観せてくれて、本当にありがとうございます。感動しました。加藤さんは大変かもしれないけれど、私はぜひ「スカラムーシュ・ジョーンズ」を再演してほしいと思っています。

加藤健一事務所HPバックステージレポに舞台写真がUPされています。どの写真も大好きです。写真を見ながらお芝居を思い出しています。私はもうしばらく「スカラムーシュ」の世界に浸っていたいです。

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