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「審判」公演感想 [公演感想]

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義庵第1回公演「審判」
作:バリー・コリンズ
訳:青井陽治
演出:加藤健一
出演:加藤義宗
場所:シアター風姿花伝

【感想】(鑑賞日:2020.9.11)(ネタバレあります)
劇場に入ると、舞台には証言台がぽつんとあるだけ。これから2時間30分のお芝居が始まるのか・・・とちょっと緊張しながら開演を待っていました。
始まると「イルカのテーマ」が流れてきました。この曲は加藤健一さんの「審判」の時のラストに流れていた曲で、あの時に舞台で見た青い空が蘇ってきました。
義宗さんが話し出すと、健一さんのヴァホフが浮かんできました。何回も健一さんの審判は観てるので、こうなるだろうな・・・と思っていました。台詞も意外に覚えていました。

ヴァホフの証言を聞いていると、裸で閉じ込めるなんて酷いって思います。人間として扱っていない。その上食料も水もなしで、置き去りにしていくなんて・・・ これが戦争なのかと思います。
何日目かにトレチャコフ大佐がくじ引きを提案して、自分が当たってしまうのですが、不平不満は言いません。自分の肉体を他の6人の食料として提供する決意をして、お祈りをする時間だけもらうのですが、「最後まで妻のことを思っていたと伝えてくれ」とヴァホフが話すところは涙が出ました。
その後だんだんと状況が変化していき、2番目にくじに当たったライセンコは、その結果に不服を申し立てたけれど聞き入れられず殺されてしまいます。その同じ時に、バリシェフスキーはその状況に折り合いのつけられなくて、自ら命を絶ってしまう。だんだんと状況が過酷になっていくにつれて、私はこの場所から逃げ出したいって思いました。でもヴァホフは逃がしてはくれない、私たちは陪審員だから、”最後まで証言を聞かなくちゃいけない”と言われます。途中は本当にしんどかったし、長く感じました。でも、また展開が変わっていくので、ヴァホフの証言に集中することができました。
ヴァホフの顔が変化していき、まるで別人のように思うこともありました。証言台に突っ伏した後、顔を上げた時は、すごく怖かったです。その一方で、最後に二人だけになってしまったルービンのことを思いやるヴァホフは、人間の極限状態になってもあんなに優しくなれるのかと思うほど、愛情にあふれていました。これまでルービンの役割をヴァホフが担うことになって初めてその責任の重さがわかったことや、ルービンの人柄を聴かせてもらえて良かったと思いました。
救出された時に、ヴァホフは”生きてる喜び”を感じるんですが、あの場面は大好きです。でもその喜びは束の間で、人間の肉、それも同胞の肉を食べて生き延びた者への冷たい目が向けられていることを知ってしまいます。
ルービンは正気をなくしていまっているので、ヴァホフが証言台で生き延びた60日間のことを話さなければ、何もかも闇に葬られてむられてしまう、その中で何があったのかを正確に伝えなければ・・・という彼の強い気持ちを感じました。だから私も聴かなくてはいけないと思ってます。
私はヴァホフにどういう罪があるのかわかりません。”なんとかして生き延びる”ことがトレチャコフ大佐の決断だったし、その意思を継いできたヴァホフを裁くことはできません。
ラストシーンはヴァホフに強い光が当たります。神々しい光だったので、神様がすべてを見ていてくださっているんじゃないか・・・と思ったりもしています。
観ている途中も終わった後も涙がでました。言葉にできない涙です。
「審判」の舞台を見ることができて本当に良かったです。義宗さんの「審判」だったなぁ~って思いました。この時期なので収容人数50%の客席でしたが、舞台と客席が一体化してるように感じました。
またコロナ対策も丁寧で、安心して観ることができました。
「審判」に挑戦され、演じきった義宗さん、新しい「審判」を創ってくれた加藤さん、そしてスタッフの皆様、本当に素敵な舞台をありがとうございます。

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